CBD製品の食薬区分と問題点

CBD製品の食薬区分とその問題点について説明していきます。食品と医薬品は、それぞれ「食品衛生法」及び「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律( 医薬品医療機器等法/薬機法)」で規制され、その法的な規制の境界線を「食薬区分」と呼びます。さまざまな知識が必要な分野ですがまずは生薬についての勉強をしなければ正しい理解ができないでしょう。*上、写真は生薬「桂皮」の写真です。

結論から言えば、薬理作用のある植物由来製品を食品区分で管理・流通させることはユーザーの健康被害リスクが大きく、またニセ医学のような擬似科学が生まれやすいといった公衆衛生上の脅威になる可能性が高くなります。アメリカやイギリスで先行して起こった問題が日本でも起こる可能性を危惧しています。CBDの流通について慎重な議論がなされることを望んでいます。詳しくは以下。

 

1,そもそも生薬とは何か?と原材料としての生薬

 

まず生薬(しょうやく・きぐすり)とは何でしょうか?日本薬局方では「動植物の薬用とする部分、細胞内容物、分泌物、抽出物、または鉱物など」と定義されていますが天然に存在する薬効を持つ産物をそこから有効成分を精製することなく、体質の改善を目的として用いる薬の総称と考えるとわかりやすいかもしれません。英語ではcrude drug(未精製の薬)と呼ばれます。生薬の大半は植物由来のものですが、動物や鉱物などに由来するものもあります。世界各地の伝統医学で多くの生薬が用いられていますが伝統医学に限りません。似た概念で「漢方薬」がありますが漢方薬は生薬の組み合わせであり同一の概念ではありません。生薬が単体で使われるときは民間薬として扱われることも多いです。現代医学では有効成分を取り出して精製した状態で使われますが、生薬は未精製のものを用います。生薬は現代の薬のルーツであり、また誰でも簡単に用いることができるといった良さもあるのです。例えば、生姜(ショウガ)は薬(ショウキョウ)として使われますし、食品としても使われます。同じ成分のものが食品として流通することも薬品として流通することもよくあります。大麻について考えれば、植物であり薬物であり食品でもあるため生薬として考えることも出来るのではないかと思います。

次に「原材料としての生薬」について考えていきましょう。原材料は成分本質と呼ばれ医薬品として扱われるもの、サプリメントや食品として扱われるもの、両方使われるものに分類されます。厚生労働省では、製品の原材料となるものについて、医薬品としての使用実態、毒性、麻薬様作用等を考慮し、「医薬品に該当するか否か」の判断を示しています。医薬品に該当する成分本質(原材料)については、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」(以下医薬品リスト)に、医薬品に該当しない成分本質(原材料)については、参考として「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(以下非医薬品リスト)にその例示が掲げられています。医薬品リストに掲載されている成分本質(原材料)は、 いわゆる「健康食品」に使用することはできません。これらを1種でも原材料として使用したものは「医薬品」と判断されます。*ただし添加物としての利用は除く。(東京都福祉保健局HPより)上記のように何をもって医薬品に該当するかの定義・判断はすごくあいまいで慎重な議論が必要な場合もあります。少し注意が必要です。

大麻由来のCBD製品、例えばCBDオイルについて考えればCBDが成分本質(原材料)にあたります。日本では違法ですがTHC入りのグミキャンディではTHCが成分本質(原材料)となります。

 

2,CBD(カンナビジオール)製品がサプリメントなど食品として流通するのは何が問題か?

海外では薬品として効果や効能を標榜して売られているものが日本で食品として売られる場合もあります。例えばセントジョーンズワートやイチョウ葉などがそれにあたります。薬用植物を原料とする製品が医薬品ではなく「 食品 」 として販売される場合は効能の表示があいまいなうえに不純物を含んだ粗悪品や偽造品、含量不足の商品が流通してしまうのです。医薬品は品質管理に対する厳しい取り決めがあるためにこのようなことは起こりづらいのですが、このことは世界共通の問題となっています。またサプリメントのコエンザイムQ10と医薬品のユビデカレノンのように同じ成分のものが同時に食品、医薬品として出回るものもありますが、その場合もやはり上記のようなことが問題になります。生薬のスペシャリストの日本大学・安川憲先生は同じ成分がサプリメント、医薬品として同時に市場に流通する場合には「迷わず医薬品を選ぶ」よう勧めています。

特に大麻由来成分である CBD は成分偽装やTHC 、重金属等異物混入の問題が常態化しています。アメリカでは84CBD製品のうち69%に成分偽装があったそうです。( 参考 1)また、 効果や効能が大げさに喧伝されやすい問題も起きています。 標準治療から患者を遠ざけ公衆衛生上の脅威になる可能性 がFDAのHPやミズーリ州医師会の論文でも報告されました 。( 参考 2 )イギリスやアメリカではBBC NYタイムズといった大手メディアもこの問題を報じています 。

食品として流通するサプリメントには崩壊率の問題もあります。簡単に言えば錠剤がどれだけ速やかに溶け身体で吸収されるか?ということなのですが医薬品と違って基準がないのです。こちらは日本国内の話ですが消費者庁が2019年に衝撃的な結果を公表しました。100のサプリメント製品を調査したところ、なんと4割以上のサプリメントが医薬性崩壊試験に不合格。これはすなわち有効成分が身体に吸収されるかどうかすら怪しいことを意味します。サプリメントは見た目はカプセルや錠剤でも医薬品でないためこのような問題が常に付きまとうのです。これだけでも薬効があるものをわざわざ食品で流通させない方が良い理由が、わかると思います。

 

3,CBDも慎重な流通を。「西洋ハーブ医薬品」という選択肢もある

 

本邦においても、次々に流入する植物由来製品を安全に管理することは重要課題となっています。いい加減な製品が出回らないよう厚労省も対策を行っています。 2003 年 6 月には「第一回一般医薬品として生薬製剤(西洋ハーブを含む)の審査の在り方に関する検討会」を行いました。厚労省はその資料(参考 3)の中でも「生薬(主に西洋ハーブ)が医薬品等としての承認がないまま食品として流通し国民が利用していること 」を問題視しており「 医薬品等として行政的にコントロールすべき」、「味、香り 、栄養的価値を目的に飲食するものが食品 」と明言しています。

その後も検討会は進み、2007年3月22日に厚生労働省の通達が出されました。新たに臨床試験を行わなくても海外での臨床試験結果を申請に用いることができるなど比較的容易に医薬品申請を行える道筋が示されたのです。実際にゼリア薬品エスエス製薬がハーブを使った医薬品を商品化しています。OTC医薬品という市販薬での販売はユーザーがセルフケア目的で用いることができ、なおかつ品質管理もなされるといった非常に理にかなったやり方であると思います。

 

生薬やハーブと同じく植物由来成分であるCBDもこれに準じて考えCBDが含まれる製品は「西洋ハーブ医薬品」(参考4)のように「医薬品として」取り扱うのが理想ではないでしょうか。そのほうが成分偽装や異物混入などが起こりづらくユーザーのためになると思います。

 

参考1:Labeling Accuracy of Cannabidiol Extracts Sold Onlin:JAMA. 2017;318(17):1708 1709

参考2:Medical Fraud, Mislabeling, Contamination: All Common in CBD Products Mo Med. 2020 Sep Oct; 117 (5): 394-399 

資料3:一般医薬品として生薬製剤(西洋ハーブを含む)の審査の在り方に関する検討会(第一回)

参考4:西洋ハーブ医薬品について 袴塚高志(国立医薬品食品衛生研究所生薬部長)

参考書籍:いまさらきけない生薬漢方薬 牧野利明著(医薬経済社)

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