薬草大麻、すなわち大麻草を利用したセルフケアや代替医療は世界中で行われています。日本社会でこれを実現させるにはどのようなステップを踏んだらよいのでしょうか?

大麻の利用は大きく4つに分けられます。嗜好利用、医療利用、産業利用、日本文化利用です。ただ医療分野は少しわかりづらいです。このサイトでも何度もお伝えしているように製剤利用とウェルネス・セルフケア利用の2つに分ける方が正確に理解することが出来ます。あくまで現時点での予測ではありますが社会における認識のされ方も大きく異なる大麻草の利用方法について書いていきます。

 

(1)分野別・大麻草の利用方法

分野別に表にしてみました。上に行くほど社会の関心やニーズが高い領域ですが同時に心理的な忌避感も強くなっています。本邦においても、この矢印のように下から上へ大麻の理解を進めていくことが近道なのではないかと考えています。順に説明します。

 

1,嗜好

いわゆるマリファナのようなものを想像するとわかりやすいでしょう。嗜好品として花穂の部位を利用します。THCという酩酊成分が多く含まれていますが有害性が少ないために世界各地で解禁や規制の見直しが進んでいます。社会の関心や潜在的なニーズが最も高い領域かもしれません。

 

2,(1)医療(薬草)

痛みの緩和やウェルネス・QOL向上目的で使用されます。花穂の部位を使用しますがTHCに加えてCBDというハイにならない成分が使用されることも多いです。セルフケアとして使われることが多く嗜好大麻との見分けも付きにくいのも特徴です。代替医療的でありエビデンスのはっきりしないものも多いです。

 

2,(2)医療(製剤)

エビデンスレベルが高く医師の管理で使用されるため、社会の理解が得やすいです。一例をあげるとFDA(アメリカ食品医薬品局)にも承認されたエピディオレックス(以下写真)という製剤があります。これは難治性のてんかんに効果がありアメリカでは1歳以上の患者さんのレノックス・ガストー症候群(LGS)、ドラベ症候群、または結節性硬化症(TSC)に関連する発作の治療が承認されています。日本でも治験を経て近い将来、使えるようになるでしょう。

 

3,産業

繊維は衣服や紙や建材、種は食料やオイルなど幅広い利用のされ方をしますアメリカ合衆国ではTHCの含有量が少ない大麻の品種を「ヘンプ」としすべて農作物として育てられるようにしました。世界的ジーンズメーカーリーバイスはSDGsの一環として環境負荷の大きいコットンからヘンプ素材を使っていくことを表明しています

 

4、日本文化

神社の鈴縄、巫女の髪を結う紐、横綱のまわしも大麻でできています。日本では古来より神聖さの象徴として大麻を使っていたという事実があります。しかし良く誤解されることですが日本で古来より大麻を嗜好品として喫煙していたという証拠は見つかっていません。

 

(2)日本社会で薬草大麻を実現するには?

大麻は上記のように様々な用途がありますが戦後に大麻取締法が制定され厚生労働省が1980年代から薬物に対して身体への害や依存症の害を必要以上に誇張や強調し「ダメ。ゼッタイ。」をキャッチコピーに厳罰化政策を進めたことで、いつの間にか違法な薬物という認識と忌避感が広まってしまいました。国が正しい教育や支援を行ってこなかったことを精神科医の松本俊彦氏も指摘しています。★1これが「忌避感」になっている原因の一つで医療や嗜好だけでなく、産業や日本文化としての大麻の問題を考える上でも非常に大きな障壁となっています。薬物とは本来何も関係ない繊維をとるための大麻農家が危険視されたり、必要以上に規制をされることが近年まで行われていました。このことは令和3年に行われた厚生労働省の「大麻等薬物の在り方検討会」でも指摘されようやく改正に向けて動き出したところです。

 

嗜好分野・医療の薬草大麻の分野は社会に許容されるまでのハードルがかなり高いでしょう。産業より下の3つ(産業・医療製剤・日本文化)は法改正をすれば進む可能性が高いです。しかしながら上の2つ嗜好大麻、薬草大麻は日本社会の忌避感が最大の障壁となっていて議論もなかなか進みません。法令順守でステップを踏み少しずつ理解を進め、社会の忌避感を取り除くしかないでしょう。

 

度々このサイトでも指摘していますが、病気で困っている人がいる→医療からなら理解を得られやすいのでは?は完全な間違いです。代替療法的な全草使用の薬草大麻は今の医療体制にも組み込みづらくまたエビデンスにも乏しいため法改正の理由にならないからです。ただし、すぐには無理でも必ずいつか合法化されると思います。戦前は民間薬としても利用されていました。上記表の矢印を下から上へ少しずつ理解を進めていくことが結局は近道なのではないかと考えています。産業大麻の規定すなわちTHC含有量が決まれば良質なCBDオイルや薬草も出回る可能性が高まり大麻の薬草利用ができる可能性も高まります。またEBMが確立した現代において通常医療の分野を飛び越えて民間療法である大麻の薬草利用が製剤より先に成立する可能性も低いでしょう。焦らずに、少しずつ社会の理解を得ることが大切です。

 

 

参考1:松本俊彦.ハーム・リダクションの理念とわが国における可能性と課題.精神神経医学雑誌.2019;121(12);914-925.

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