大麻のリテラシー問題

情報取り扱い能力のリテラシーについてや、医療健康情報の取り扱い能力のヘルスリテラシーについて大麻との関連性を中心に書いていきます。大麻や薬草をはじめとする代替医療の情報発信はどうしても大げさな情報や嘘が混ざりこみやすく、インパクトのある過激な情報であればあるほどSNSなどで拡散されやすいため注意が必要です。医療や代替医療の知識がない一般の方は騙されて被害にあいやすいです。例えばずっと体調が悪い、なかなか治らない持病で悩んでいる方がインターネット上の情報をうのみにしたいして効果がない、また何が入っているかもわからないCBDオイルを買って自己判断で使い病院に行くのを先延ばしにすれば、金銭的被害だけでなく健康被害が起こる可能性があります。結論から言えばエビデンスが確立された製剤を医師の処方で用いる方法以外の大麻草を使うヘルスケアは所詮、代替医療的であり特別に凄い効果はないと覚えておけば被害に遭う可能性は大幅に減らせます。無意味という意味ではなく、上手に使い上手に付き合う事が大事です。以下、詳しく書いていきます。

 

まずリテラシーとはなんでしょうか?リテラシーは英語の「letter=文字」からきており、意味は「読み書きの能力」になります。Wikipediaには「書き言葉を正しく読んだり書いたりできる能力、何らかの表現されたものを適切に理解・解釈し、分析し、また記述・表現する能力」と書かれています。情報をうのみにせず正しく吟味し判断できる人を「リテラシーが高い」と言ったりまた逆の人のことは「リテラシーが低い」というような言い方がなされます。

 

続いてヘルスリテラシーとは何でしょうか?聖路加国際大学大学院看護学研究科看護情報学科の中山和弘先生がヘルスリテラシーに関するサイトを運営しているのでそこから抜粋し紹介します。

健康情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力であり、それによって、日常生活におけるヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションについて判断したり意思決定をしたりして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるもの(参考1)

またヘルスリテラシーには、いくつかのレベルや次元があるといわれナットビーム(Nutbeam)は3つのレベルに分けて説明しました。(参考2)

 

ナットビームのヘルスリテラシー3分類

(1)機能的(functional)ヘルスリテラシー

読み書きの基本的能力をもとにしたもので、健康リスクや保健医療の利用に関する情報を理解できる能力のことです。たとえば漢字が読めない、言葉の意味が分からないと医師の説明が理解できなかったり医療情報を正しく認識できなくなります。文字や言葉の意味を理解する、受け身なレベルでの能力のことです。

(2)相互作用的(interactive) ヘルスリテラシー

より高度で、人とうまくかかわる能力(ソーシャルスキル)を含んだもののことです。たとえば日々の活動に積極的に参加し、様々な形のコミュニケーションによって情報を入手したり意味を理解したりして、変化する環境に対しては新しい情報を適用できる能力をもとにしたものを指します。周囲の人々とうまくコミュニケーションができること、いわば、サポーティブな環境の中で情報をもとにうまく立ち回れる能力のことです。

(3)批判的(critical)ヘルスリテラシー

情報を批判的に分析し、この情報を日常の出来事や状況をよりコントロールするために活用できる能力のことです。自分の目的の実現にとって周囲の人々や環境が障害になっている場合、置かれた状況に関する情報をしっかりと分析し、それらを変えることができる能力のことです。

 

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他にもヘルスリテラシーを理解するための分類や用語はたくさんあるのですが長くなってしまうのでこの辺で大麻の話題に戻り「大麻におけるリテラシーの問題」を考えていきましょう。

最初に前提としてお伝えしておきたいのは「リテラシーが低い人に対してどのようなコミュニケーションをするか?」が重要であって対立をしたり批判しても仕方がありません。例えばアメリカ医師会では医師のためのヘルスリテラシーマニュアルがあり、ヘルスリテラシーが低い人(対患者)とのコミュニケーション技法も存在します。(参考3)日本語訳はこちらでも紹介されているので興味がある方はご覧ください。医師でなくてもすぐに実践できるようなことも書かれています。

またあえてリテラシーの低い人を集めビジネスをする手法は昔からありますが、それはいわゆる情弱ビジネスと呼ばれるやり方に近く社会から不信感を招くこともあります。大切なのはどのように円滑なコミュニケーションをし、社会と良好な関係を築くか?では無いでしょうか?以下3つはすぐに解決できる問題かもしれませんし、時間がかかる問題かもしれません。何か考えるキッカケになれば、と思いますので解決策の提案も含めて書いていきます。

 

大麻のリテラシー問題1「大麻に不信感がある一般の人と大麻愛好家の議論が噛み合わない」

大麻の愛好家の人が大麻の良さや合法化を日本社会に伝えようとしても、大麻は情報が正しく伝わっておらずほとんどの人は大麻に対して「麻薬でありダメ!ゼッタイ!」という認識を持っています。そもそも大麻を見たこともない人も多く、最初から大麻は悪いものと思っているので議論が噛み合うことはないです。大麻への忌避感を持っている人は大麻に対してのリテラシーが低い状態です。薬物の観点から見ても日本人の大半は薬物教育を受けていないため覚醒剤と大麻の違いが理解出来ている人が少ないです。薬物のリテラシーも低いと言えるでしょう。

わかりやすく例えるならばパソコンが嫌いで嫌いで仕方ない、こんなものは必要がない、社会において害ですらある、と考えているご年配の方の状況に似ているかもしれません。そういう方は家電量販店の店員さんやパソコン教室の先生に何を言われても反発します。その方にどのようにアプローチし、声をかけるとコミュニケーションが成り立つか?考え想像すればヒントになるかも知れません。

 

大麻のリテラシー問題2「医療大麻という言葉が意味不明」

上記のように日本社会においてほとんどの人は大麻に対するリテラシーが低いです。そのためこのサイトでもたびたび指摘しているように「医療大麻」と言う言葉もコミュニケーションとして成り立つ事はありませんが言葉だけが一人歩きしています。医療大麻とは本来、代替医療的な大麻の喫煙や自己治療目的での使用を中心に幅広い意味で使われるのですが日本に住んでいるほとんどの方は大麻を見た事がないため、医師が厳重に管理する現代医学的な製剤を用いる方法までしか想像が及びません。そのため医療関係者であっても「医療大麻」という言葉で議論が噛み合うことはまずないでしょう。大麻を吸うのが医療大麻と言えばふざけているのではないか?と思われるかも知れません。私たちは医療大麻という言葉の再定義が必要だと感じています。

 

大麻のリテラシー問題3「ヘルスリテラシーが低い人に、CBDや大麻草の過剰な医療効果をあおる人がいる」

そもそも日本人のヘルスリテラシーはほかの国と比べても低いという研究もあります。(参考4)そして、多くの代替医療情報はほとんどが科学的に確立されたものでないため効果が大げさに宣伝されやすいのですが(参考5)特に大麻は本邦において違法薬物としても認識されているため神秘的なイメージを持たれやすいです。

また大麻は所持していると逮捕される状況があるため大麻愛好家は社会に対しての不信感を持ちやすいです。社会に対しての不信感が強い人は通常医療の否定やワクチン忌避とも親和性が高いためヘルスリテラシーの低さや認知の歪みにつけ込んだマーケティングでCBD製品の医療効果を過剰に宣伝したり、「大麻で癌が治る」などの過激な話をする人があとを絶ちません。そのような無責任な人は経済的被害や健康被害が出てもけして責任を取る事はしないでしょう。残念ながらこれからもいなくなることはないので一人一人がヘルスリテラシーを高めて防衛する必要があります。

 

大麻のリテラシー問題に関して、私たちは3が一番害があり問題があると考えています。これに関して、医療関係者ではない一般の方が医療・健康情報の見極め方をすぐに身に着けるのは困難だと思うのでまずは以下のことを覚えておけば騙されにくくなると思います。

「(医師の診断とエビデンスをもとに製剤を使う現代医学的方法は別ですが)大麻草を使うヘルスケアは所詮、代替医療的であり特別に凄い効果はない。無意味という意味ではなく、上手に使い上手に付き合う事が大事。また大麻草の医療利用は未だ違法なので現時点で病気の人や困っている人は期待しすぎずに、慎重に考えるのがよい。

です。CBD製品に関しては、食品区分で流通されているものならばそもそも効果や効能をうたえないはずなので、効果をにおわせて販売しようとしていたらさらに疑ってかかるとよいでしょう。

 

参考1:Sorensen K, et al. Consortium Health Literacy Project European. Health literacy and public health: a systematic review and integration of definitions and models. BMC Public Health. Jan 25;12:80, 2012.

参考2:Nutbeam, D. : Health literacy as a public health goal: a challenge for contemporary health education and communication strategies into the 21st century. Health Promotion International, 15(3), 259-267, 2000.

参考3:Weiss BD. Health Literacy and Patient Safety – Help Patients Understand. American Medical Association Foundation, 2007.

参考4:Nakayama K, et al. Comprehensive health literacy in Japan is lower than in Europe: a validated Japanese-language assessment of health literacy. BMC Public Health. 2015 May 23;15:505

参考5:厚生労働省 eJIM 「コミュニケーション」

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