漢方と大麻を混同するな

大麻の薬草利用と漢方は同列に語れるものなのでしょうか?共通点は多いのでしょうか?漢方理論の中に大麻は存在するのでしょうか?

結論から申し上げますと共通する部分はあるものの、現在の漢方理論体系からは外れてしまっているために「大麻を漢方と関連付けて語ること」は無理があります。ミスリードになると漢方研究者や医師・薬剤師・医療関係者をはじめ社会から信用を失ってしまうことも考えられます。薬草大麻は漢方薬というよりは「民間薬」に近い位置づけです。以下に詳細を記していきたいと思います。

 

1,漢方薬と民間薬の違い

漢方薬とは漢方の理論に則り、生薬を組み合わせて処方される薬のことです。一つの薬草だけでなく、複数の生薬が一定の比率で組み合わされ、一つの処方が完成します。様々な成分が体に作用し体全体の調子を整えるよう働きかけます。漢方薬には中国の医学書である傷寒論、金匱要略などの原典が存在し、そこには生薬の基原、製法、用法用量などが記載されています。臨床的知見が集積され、用いる際の注意点や用いるべき病態も詳細に定められています。(参考:クラシエ「漢方薬と民間薬の違いとは?」)さらに細かく言うと中医学と漢方医学、日本漢方もそれぞれ別のものですがここではその話には触れません。

民間薬とは民間に伝承されてきた薬のことで基本的に「単一生薬」です。理論というよりは経験や勘に基づくものが多いです。漢方薬と民間薬は、どちらも植物や動物・鉱物などの天然物を使用しているなどよく似ていますが、 薬の構成や作り方・使い方などに大きな違いがあります。(参考:日本漢方生薬製剤協会「漢方の解説」)対比すると以下のようになります。

 

構成:民間薬は単一成分、漢方薬は複数の生薬からなる。

作り方、使い方:民間薬は経験や勘、漢方薬は理論に基づく。

例:民間薬はゲンノショウコやセンブリ、漢方薬は芍薬甘草湯など。

 

2,なぜ大麻の話と漢方薬の話は混同されやすいのか?

大きく分けて4つの理由があると考えています。1つ目は民間薬・漢方薬が混同されているため。一般的な病院で処方されるいわゆる現代医学のお薬は合成された単一成分のものがほとんどでその点が生薬とは違います。しかし生薬も上記のように民間薬と漢方薬は全くの別物です。この点を混同している方が多いのではないかと考えられます。2つ目は「大麻の実(種)」であるマシニンだけは現在の漢方理論体系に存在するため。「大麻の葉や花」は現在の漢方の理論体系から外れていますがマシニンを用いた「麻子仁丸」という漢方薬は現在も存在します。マシニンだけでなくシャクヤクやキジツ、コウボク、ダイオウといった生薬の組み合わせで出来ています。3つ目は大麻が漢方の古典「新農本草経」などに登場するため。ここでは大麻の花穂らしきものについての記載もあります。(参考:山本郁男「大麻文化額考察その4」)しかし現代の漢方理論ではマシニンを除き理論体系から外れてしまっているのです。そもそも、かつては理論体系に含まれていたのか?もともと民間薬のような位置づけでマシニン以外は漢方の理論体系に含まれていなかったのか?いつの時代かならそうなったのか?・・・詳しくは、よくわかっていません。4つ目は東アジアの伝統医学では薬草大麻を使うケースもあるため。一例をあげればインドの伝統医学アユルヴェーダでは大麻草を使用します。文献にも記載されています。しかし、お隣の国であるチベットの伝統医学では大麻を使うことはありません。同じ東アジアの伝統医学でもいろいろ事情が違うのですが東洋医学という一括りのワードで混同してしまう人が多いのかもしれません。

上記のような4つの理由から「大麻と漢方薬の話」は混同されがちです。が、もしも誤った情報を流してしまうと社会から信用を失うことも考えられます。注意が必要なトピックだと思われますのでここにまとめました。ご参考までに。

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